「はぁっ?なんだそれ?普段からこんな口元だ」

「違うわよ。意地悪仕掛けてる時に出る癖に気がついてないんでしょ?」

「…へー、知らなかった。お前、俺のことよく見てるんだな」

高橋さんの手が急に伸びてきて、肩にかかる毛先をウェーヴに合わせて指に絡めていく。

な、なに⁇

こんな事されるのは始めてで、何度も瞬きを繰り返し、現状を把握できず驚いている。

そのまま高橋さんは私の髪で遊び、耳に髪をかけ耳朶を指の腹でなぞっていく。

鳥肌とは違うゾクッとくる身震いをした私を見た彼ははクスリと笑い、どこかいつもと違っていた。

「耳、真っ赤」

「…お酒のせいだから」

咄嗟に両耳を手のひらで隠し、高橋さんの悪戯に赤くなった訳じゃないと言い訳するけど、バレているに違いない。

ニヤリと笑った高橋さんの前に、ブランデーの入ったグラスを置くコウ兄に彼は確認を取る。

「千花、何杯目?」

「一杯目」

「一杯でもなる時はなるの。疲れてる時とか寝不足だったりしたら一杯でも赤くなるんだから」

言い訳がましく言い、耳にかけられた髪を元に戻して、無意味に髪を指でとき、落ち着きを取り戻そうとするが、ドキドキは静まらない。