私は口を尖らせた後、大きなため息を吐いた。


そして結局、答えが出ないまま、今お店の前にいる。

ドアを開けようとドアノブを掴んでは引っ込めてを繰り返し、頭の中で高橋さんに会った時のイメージトレーニングを何度もするたび、向こうの出方を考えすぎて、頭の中はごちゃごちゃになっていた。

こちらが気にしているほど、向こうは気にしていないかもしれない。

もしかしたら、覚えていないかもしれない。

向こうは自分よりも年上なのだから、大人の対応をしてくれるはずだ…

よしと、勇気を振り絞ってドアを開けた。

いつものように、コウ兄はカウンターの向こう側でお酒を作っていて、私に気がつくと予約席の札を外し座るよう促してくれるが、いつもの定位置には誰も座っていない。

「斗真ならまだ来てないぞ」

私の視線は、高橋さんを探して店内を見回していたらしい。席に座るなり冷えたビールとともにコウ兄は一言を残してお客さんのオーダーを受け取り、忙しそうにお酒を作っていく。

「別に探してないもん」

誰に言った訳でもないが、図星を突かれて、つい言ってしまう。

いつもなら一口目をグイと呑むのに、今日はチビチビと呑みながら入り口の気配を伺っていた。