というか、時雨くんが微笑んだのを初めて見たように思う。
笑顔自体は何度も見てるけど、こんな風に優しく笑うこともあるんだと初めて知った。
接点がなかったから知らなかっただけかな。
友達やクラスメート…少なくとも伊勢谷くんの前では当たり前のように微笑むと思う。
なんてったって、秘密のアカウントをフォローし合ってるくらいだもんね。
……っと、それはともかく。
そろそろ引き上げよう。
ここにこのまま突っ立ってたって仕方ないし、かと言って わざわざ時雨くんのそばに寄るのも変だし。
まぁ一応…挨拶はした方がいいよね。
「時雨くん、私もう行くね」
「なんで?」
「え?」
「どうせ暇なんだろ? だったらもう少し居れば?」
私のそばにやって来た時雨くんは……自分の携帯をそっと私に差し出した。
「写真。 SNSにアップしてない分も見ていいよ」
「えっ……!?」
「トラに聞いた。 唐草 美麗のフォローから俺のアカウント見つけたんだろ?」
伊勢谷くん……言っちゃったのですか……。
やっぱりちゃんと口止めしとくんだった……。