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いつもよりも遅い時間だから、駅に向かう通学路に生徒の姿はない。

そこを2分ほど進み、分かれ道を左に行く。

この道を真っ直ぐ20分くらい進むと私の家に到着だ。


公園は、学校の目と鼻の先。

なんだか……急に緊張してきた。

心臓がドキドキと大きな音を立てている。



「あっ……」



……時雨くんだ。

本当に…居た……。


早退してすぐに着替えたのか、私服を身にまとっている。

ベンチに座りながら携帯を操作……したかと思ったら、それを空に向けてパシャリとシャッターを切った。

撮り終わったら即座に画像を確認し、また空に向かって携帯を構えた。

撮っては確認、撮っては確認を何度も繰り返し、ようやく一息ついた時に……公園の入り口に立ち尽くしていた私と目が合った。



「うわビックリした。 早乙女 美麗じゃん」

「ご、ごめん。 なんか、声かけるタイミングが見つからなくて……」

「今 帰り? つか遅くない?」


「えっと……教室でぼんやりしてたら、この時間になっちゃってて……」

「そっか」



時雨くんは、なんでもない様子で私に微笑んだ。

朝のことなど、何も無かったかのように。