──その後、時雨くんが私の教室に来ることはなかった。

いつも通りの平穏な日常だ。


休み時間にトイレに立った時、廊下で女子に囲まれてた伊勢谷くんと目が合ったけど、当然のように会話はない。

でも、伊勢谷くんは少しだけ話したそうな顔だった…ように見えた。


でも周りの状況を見て断念したみたい。

私自身も、話す気がないオーラをビンビンに出してたしね。


時雨くんとは会ってない。

というか時雨くんは、1限目のあとすぐに早退したらしい。 とファンの子たちが言ってるのを聞いた。

理由は、体調不良。

けど朝はあんなに元気だったから、十中八九 仮病でサボりだ。



「まったく……どこが体調不良なんだか」



と呟きながら携帯の画面を見つめる。


あっという間に時間が過ぎて、今はもう放課後だ。

5組の教室に残ってるのは私だけ。


見つめる携帯に表示されているのは、アスファルトのヒビから伸びて懸命に咲く野花の写真。

時雨くんの秘密のアカウント……「マル」がアップした最新の画像だ。