「お前の名字ってなんだっけ?」
「……早乙女」
「え……そっちも似合わないな……」
「うるさい、馬鹿」
似合わないのなんて、物心ついた時から知っている。
そのせいでずーっと男子に からかわれてきたんだから、嫌というほどにわかってる。
「……本当は今すぐにでも改名したい。 って、ずっと昔から思ってるよ」
そう言葉を吐いたあと、私は再び教室に向かって歩き出した。
「ニセ美麗っ」
時雨くんが呼んだけど、振り返ることなく歩き続ける。
ニセじゃないし。
17年間 美麗っていう名前で生きてきたっつーの。
と、心の中で叫び続けながら。
あぁ……朝から最低の気分だ。
いつも通りの時間に家を出ればよかった。
1組の教室なんか行かなきゃよかった。
撮影場所を見てみたいなんて…思わなきゃよかったんだ。
後悔。
後悔。
また後悔。
胸の奥がチクチクと痛むのを感じながら、私は自分の教室に入った。