完璧に引かれている。

でもまぁ…うん……それでいいや。

変人扱いされれば、これ以上絡まれることもないだろうし。


うん。

私は変人…変人……って、そう思っておこう……。



「マル、おはよう」

「なんだよトラ、もう来てたのか?」

「とっくの昔にね」


「チクショウ、また俺の負けかー」



1組の教室のドアから、伊勢谷くんがひょいと顔を出した。


……あ、ヤバい。

私が1組に居たことを、伊勢谷くんに口止めするの忘れてた……。


でも時雨くんが居る前じゃ口止めなんて出来ないし……どうしよう……。



「マルの騒がしい声がすると思ったら、美麗さんと話してたんだね」

「おいトラ、コイツは美麗じゃなくてニセ美麗だって言っただろ?」

「本名なんだからニセも何もないと思うけど」


「紛らわしいからニセ美麗でいいんだって」

「普通に呼んであげなよ、二人とも唐草 美麗のファンなんだから」

「えぇー……」



伊勢谷くんは穏やかな笑みを見せる。

一方の時雨くんは凄く嫌そうな顔だ。

名前を呼ぶ呼ばないはどっちでもいいけど、明らさまに嫌そうな顔はちょっとだけ傷つく……。