「……よし、じゃあ なんとなく話がまとまったところで、私は自分の教室に行くね。 もうすぐ みんな来る時間だろうし」

「うん。 またね、美麗さん」

「バイバーイ」



ひらひらと手を振る伊勢谷くんに手を振り返したあと、私は自分の教室に向かって歩き出した。


伊勢谷くんは「またね」って言ったけど、私はその言葉は使わなかった。

昨日も今日も伊勢谷くんと喋ったけど、多分もうこの先は無いと思うから。


私は平凡すぎるくらいに平凡な女子高生で、彼はイケメンで文武両道、そして男女ともに人気があるスーパー男子高生。

伊勢谷くんは唐草 美麗を探してた時雨くんを手伝い、私に声をかけてきた。

ただそれだけ。

それが無ければ、一生会話なんてしなかったはずだ。


同じ高校に通ってはいるものの、住んでる世界はまるで違う。

だからこの先は、もうこんな風に喋る機会すら訪れないだろう。


伊勢谷くんはみんなの輪の中心に居て、私はそれを遠目に眺めながら まったりと過ごしていく。

そういう日常に戻るんだ。

平凡だけど楽しくて幸せな、そういう日常に……。






「ニセ美麗っ」



……って思ったのも束の間。

登校してきたばかりらしい時雨くんが、私のところに駆けてきた。


うわぁ。

嫌な予感しかしない……。