栗原先生の車の中で、ユウキは、最近になってようやく娘の事故のショックから少し立ち直りつつあることや、先週の環境調査実習のことなどを、栗原先生に話した。



栗原先生も、最近は、自分の家の会社のことで忙しかったようで、大学の仕事がかなりたまっているそうだ。



車が高速道路を降りて、繁華街まであと１０分ほどのところまで来たとき、栗原先生が、突然、「あっ、ユウキ、言うの忘れてたけど、今から、一人、女を迎えに行くから」。



「えっ、ひょっとして、同伴ですか？」。



「まあ、そんなトコ」。



「はい、別にどうぞ、どうぞ」。



相変わらずだな、この人は。



栗原先生の車が大通り抜けて行くと、道の左側にある大きなマンションのそばに女の人が立っている。



「あっ、いたいた、あれだ」。



その女の人は、黒っぽい服に黒っぽいスカート、首には薄い青のスカーフをしている。



ユウキが助手席から目を凝らしてよく見ると、見覚えのある顔だ。



それは、カオリだった。