「もう、なに!」
イクミに引っ張られて来たところは、1年生の教室。3年生はあまり来ないので、1年生の子達が、チラチラ私達の方を見ている。イクミは、よくこの視線にたえられるな。
そもそも気づいてるのかな?
と、
「ほら、ほら、あの子達!あの子達!」
イクミが急に大きな声を出し、指をさしたので、周りにいる子がいっせいに私達の方を見た。中には、ヒソヒソと話し始め、クスクスと笑う子もいた。
「なっ……」
私には、あの視線にたえられるような度胸はない。
「もう、行こう!イクミ」
頼むから見ないでよ〜!もう、イクミのバカ!
赤くなった顔を隠しながら、イクミの手を思いっきり引っ張った。そして、イクミが指差す方へ歩いていった。
「え、ちょっと待ってよ!早いって、」
「急いでるの!私次の授業の準備してないか……」
トンッ
「ら……」
ぶつかった時、その人と目が合った。そして、その人と目が合った瞬間、小さな雑音が聞こえた気がした。
「ごめんなさい……」
「いえ、こっちこそ…すいません……」
後ろでイクミが驚いた顔をして、口をパクパクさせていたが、前に向き直り、教室までそのまま歩いた。途中でイクミが、
「あの子達の事だよ!分かった?」
と、話していたが、
「あー……」とか、「うん」とかでしか答えてない。
私は、1度も後ろを向いていない。なぜって?
だって、今後ろを向いたら、イクミが心配するような顔してるから。