ちらっと美山ちゃんを見ると、彼女もハッとした表情で私を見ていた。
“瀬名さんっ、例のイケメン営業マネージャーのことですよっ”
美山ちゃんの目が私にそう訴えているのを感じる。
“ウン。そうだと思ったよ”
と、私も視線で返事を試みる。
そんな感じで美山ちゃんと目と目で会話をしていると、
「噂をすれば……高輪マネージャーだ」
という、神崎マネージャーの声。
パッ、と、
神崎マネージャーの目線が向いている方向を見ると、
一階から三階を繋ぐフロア中央の大階段から降りてくるスーツ姿の男性を発見。
オールバックにされた黒髪、遠目からでもわかる整った目鼻立ち……
ピンとした背筋で、チャコール色のスーツをクールに着こなしている。そんな姿は―…
「・・・・・・」
思わず、見とれてしまうほどで―…
よく見ると隣りにいた、我が常盤国ホテル社長(年齢六十三歳、特徴、白髪で小柄)の姿に気が付かなかったくらい。