携帯を持つ手の力を少し弱めて、溜め息を一つ。

仕事を終えて、部屋に帰宅すると直ぐに携帯画面に表示した凌一の番号……

後は発信を押すだけなのに、一歩手前で止まってしまっている自分がイヤになる。

ガサガサ、

と、静かな部屋で、ロミ男が水槽の中で動く音が聞こえる。

ガサガサガサガサ……

その音を聞きながら、ぼんやりと浮かんできたのは今日一日の出来事で―…

模擬挙式のこと。

高輪マネージャーからの嫌味。

素敵なカップル……

そこまで頭に浮かべると、なぜかもう一度、

高輪マネージャーとの会話が頭に過ぎって……

ふわっと浮かんだ、ニコリと微笑む、彼の顔―…

その瞬間、

気付いたら携帯は発信中になっていて、発信先は勿論、凌一。