“もう凌一とは会えない”


それだけの言葉。

ほんの数秒で言い終えることが出来る言葉を伝えれば良いんだって、頭ではちゃんとわかっているのに―…

いざ、

携帯電話を片手に、凌一の番号に発信するだけのところまでいくと、躊躇してしまっている自分がいる。

恋人同士っていう関係ではなくても、“さよなら”を云うのに、こんな電話一本ですませちゃってもいいのかな?

とか、

突然、こんな事を言って、凌一はどんな反応をするんだろう。

とか……

ここまで来ても尚、最後の一歩を踏み出す大事な瞬間に立ち止まっちゃう自分。

ホント、情けないなぁ。

凌一の番号と睨めっこ状態で時計の秒針は何周まわっちゃったんだろう。