そんな空気の中、

私に拒まれた状態のままでいた凌一が体制を直し、ゆっくりと立ち上がった。


「じゃあ―…俺、帰るわ」


そう、罰が悪そうに言う。

そんな凌一に、


「あ……もう帰―…る?」


と、この部屋にそのまま居られても困るのに、妙な気遣いでそんな言葉をかけてしまう。

それに、何時もの流れにならないのなら、凌一はココに用はないと分かり切っているのに……

〝藤子が一番だよ”

なんて、その後の行為にスムーズに持っていく為の台詞。

そう。

私は何年凌一と居たって、結局は身体だけで繋がっている関係なんだ。

これ以上の関係に、進展することなんてない。


それに、私―…


そこまで考えると、


「ねぇ、凌一……」

「ん?」

「私たち、もう―…」


そんな言葉が出て、

だけど、


「どうしたの?藤子、そんなカオして」

「え……あ、ううん。やっぱり何でもない……」


“もう―…”

それから先の言葉は出てはくれなかった。