あと1センチ―…

1センチで触れてしまう。

凌一とキスしてしまう―…

そう思った瞬間、


「待って―…っ!」


そう叫ぶと同時に、両手でぐいっと凌一の身体を押しのけていた。


「藤子、どうし―…」

「ごめんっ!!」


いきなりの行動に出て、そう謝る私を少し驚いた様子で見る凌一。


「ごめん……っ、今日はちょっと無理―…」


“今日は”

そう言いながらも、何となく、心の中では“今日は”だけじゃない様な気がしていた。

だけど、今の心境を私がそのまま凌一に伝えられるはずもなく、


「その……女の子の日が来ちゃって……」


とっさに思いついた、そんな言い訳を凌一に放った。

凌一との間に流れる微妙な空気。


「……」

「……」


二人とも黙ってしまって、余計に気まずくなる。