「え……私?何で……?」
「何でって何となくだけど」
「普通……だよ。それか、仕事終わりだから疲れてるのかも……」
「ふーん。てっきり、昨日の夜に取り込み中で電話出なかったから機嫌が悪いのかと」
“取り込み中”
その言葉がどういう意味での取り込み中なのかなんて、大体察しはついてしまう。
他の女とヤッてる最中。
つまり、そういう事だ。
私よりも最中の相手を優先した事に腹を立ててる?
「まさか……」
引きつった笑いと共に、小さく言葉が出る。
確かに、関係始めの当初は悪びれも無く他の女の話題をしてくる凌一に嫉妬の様な苛立ちを感じたこともあった。
だけど、もう今さらそんな事で自分の感情に波風を立てるようなことは無い。
そう。
何時の間にか、そういう気持ちは消えている。
あるとすれば、この状態から抜け出せない自分に対してのモヤモヤ。