部屋の奥へ入っていく凌一の背中を複雑な心境で見つめてしまう。

と、


「ロミ男、まだ生きてたんだ」


凌一の何時もの言葉が聞こえて、


「まだ生きてたって……何時も言ってるけど亀の寿命ナメないでよ」


そう私も何時もの言葉を返した。

ドサッと遠慮なくベッドに座る凌一。

定位置についた凌一に、


「……麦茶でも飲もうか」


と、冷蔵庫から麦茶を取り出してグラスに注ぐ。


「はい」


テーブルに麦茶を置いて、私はベッド側とは反対の位置に腰をおろす。

何時もならここで他愛も無い会話が自然に始まるのに、なぜか今日は会話が出てこない。

何だか落ち着かない……

そう思っていると、


「藤子、機嫌悪い―…?」


凌一が私の顔を覗き込むようにして訊ねてきた。