黒づくめの男につけられて、通報しなきゃと思って手に持っていた携帯電話。
だけど、背後から身体に手をまわされて、上手く操作出来なくて落としてしまって―…
もしかして、その時、偶然、凌一に架けてしまったとか―…?
そんな事を考えて黙っていると、
『ところで藤子、今、家にいんの?』
と、凌一。
「うん……今日は日勤だったから、もう家だけど……」
『そっか。じゃあ、とりあえず着いたから切るな』
「えっ?」
一方的に途切れた通話。
そして、ピンポーン―…ッ
と、タイミング良く鳴ったインターフォン。
慌てて、通話ボタンを押しに行くと、
『藤子ー、俺』
聞きなれた男の声。
やっぱり、凌一だった。