…なんてお優しい。


「…否定しようとは思わないの?…噂」

「別に、知ってほしい人だけ知っててくれれば、それでいいし」

「そうなんだ…。なんか氷室くんって、優しいだけじゃなくて、強いんだね!芯がしっかりしてるというか!」

「っ、そう見える?」

「もちろん!」


ノートを持っていない左手で、恥ずかしそうに顔を隠す氷室くん。

こんなの見たら、もう怖いなんて思えないや。


「…ありがと」

「…?思ったこと言っただけだよ?」


感謝されるようなこと、した覚えはないし。
受け取る人によっては、プレッシャーに感じちゃうかもしれないし。


「それでも、ありがと。…じゃあこれ、職員室に届けに行こ」

「あっ、私、半分持つね!」

「え、だいじょ…」

「持ちたいの!」


私がそう言うと、氷室くんは少し驚いたような顔をして、「じゃあ、三分の一だけ、よろしく」と言って、何冊かのノートの渡してくれた。