浮かれた春を洗い流す雨に、もう六月だということを思い出した。
 窓の外の雨は随分とおさまり、今は電線や木から雨粒が垂れているのが目視できるくらいになった。先ほどまでは粒状の雨によって視界は真っ白く染まっていたというのに。
 不快な湿気が制服ごと俺を包む。体育の授業直後ということも重なって体中がべとついている。冷房をつけようという生徒の声は却下され、雨が教室に入り込まぬ程度に窓を開けている。たまの風によって雨粒はその隙間を通り抜けているが、それは窓側の席に座る俺のお陰で、クラスメートへの被害はない。が、勿論感謝もされない。実に損な役回りだ。
 授業が終わったら友人に愚痴ろうと思う。お前らの授業中の平穏と風通しは俺の犠牲によって成り立っていたんです。つまり俺のお陰なんです。感謝しなさい。だから何か寄こしなさい。