ずっと目で追ってきた。

優しいのに不器用で、でもやっぱり頼りになって...。

私が仕事でミスする度に、一番最初に手を差し伸べてくれた。
そんな彼に何度救われたことか。

私は入社したときからずっとその人のことが好きだった。

けれど突然、その恋は終わりを告げる。

「あのね、美佐。ほ、報告したいことがあるんだけど....」

「何よ。そんなに改まっちゃって」

会社から歩いてすぐの居酒屋に足を入れてから早1時間。空のビールジョッキが、いくつかテーブルの上に置かれている。

お酒の勢いに任せたのか、モジモジしながらも、ようやく彼女は口を開いた。

「私、笠原くんと結婚することになったの」