「……………………え?」

「『え?』って、何。どうかした?何処かおかしかった?」

 キョトンとした和寛に、不思議そうな表情をした夏哉が問いかける。
 和寛は急ごしらえの笑顔でゆっくりとかぶりを振った。

「……なんでもない。じゃあ、線路沿いに行ったところのデパートの入り口近くのカフェで話をしよう」

「あー、うん。あそこなら五分もかからないか」

 そう言って、三人で学校の何気ない話をしながら、線路沿いを歩いていき、デパートのカフェの奥の席に落ち着いた。
 三人ともコーヒーを頼んで、それが届いてから、夏哉が口を開いた。

「………和寛さ、クラスの女子が愛羅ちゃんの悪口言ってること、知ってる?」

「え!?ぼ、僕、き、聞いたこと無い、けど」

「そりゃあ、ね。オレらが揉み消してるから。あー………うん。オレらが愛羅ちゃん好きなのは、もちろん分かってるよな?」

 和寛は一瞬後に頷く。

 ちら、と拓真と夏哉は目配せをすると、頷いて、今度は拓真から口を開いた。
 前々からどう話すのか決めていたようだった。

「クラスの女子が、愛羅ちゃんのこと調子乗ってる、とか良い子ぶってる、とかブス、とか性格悪女、とか言ってるものだから。てか性格悪い女はオメーらだってのに。あいつらの方が調子乗んなよな」

「うんうん。男子が大方愛羅ちゃんの方へ流れてるから、ヤキモチ妬いてんだよ。そんなの妬いたところで視線はそっちいかないし、可愛くも何ともないのにな」

 そう言って二人は合わせたかのように両手を広げた。和寛はにこにこ笑っている風を装って、どうこいつらを撃退してやろう、とかずっと考えていた。