彼女はぞんざいな扱いを気にすることもなく、リビングの入り口で小さくお辞儀した。

「こんにちは」

「あぁ……ども」

 優輝は軽く会釈し、山岸の表情を伺う。もう喉はスッキリしている様子で、どういう訳か半笑いだ。

「美人だろ」

「そんなこと聞いてねぇ」


「ま、座ってよー。お茶入れるから」

 繭美に促されるまま、女はテーブルを挟んで優輝の正面に腰を下ろした。
 それに見向きもしない優輝は、しつこく山岸の顔を覗き込んでいる。

「あ、コレが例の男なんだけど――」

 優輝の視線をかわして、山岸は女に向き直り、突き出した親指だけ優輝に向ける。

「無愛想だろ?」

 女はうっすらと微笑み、優輝に視線を移すが、彼はまだ山岸に絡んでいた。

「例の……って、何? おぅ?」

「ガラ悪いな」

 しかめっ面の山岸が優輝の頭を掴んで遠ざける様子を、女はクスクスと笑って見ている。


「自己紹介くらいしろよ?」


 これまで、幾度となく女の子を紹介されてきた時の記憶が、優輝の脳裏に鮮明に蘇る。