結婚を“幸せになる”と言い替える者もいる。ゴールインと称し、人生に於ける目的地と考える者もいる。
　誰もがいずれは結婚し、子供を作ることが“常識”のように思われている。


　しかし、中にはそれを望まない者もいるのだ。


「で、実家帰ってどうなんの？」

　山岸の問いに、優輝は仏頂面を作る。

「見合い」


　山岸は爆笑しながら床に転がった。

「ハハハッ！ まだそーゆーのってあるんだ！」

「知らねぇよ」

　ひとしきり笑うと山岸は息を整え、お茶を一口啜った。

「まぁ……有りなんじゃね？ そうでもしないと、お前結婚しないだろうし」

「だーかーらー……」


　優輝は説明するのにも疲れ、テーブルに突っ伏した。

「俺は自分のペースで生活したい訳っ！ 誰かとの共同生活なんて……」

　テーブルに向かって話していたかと思えば、優輝は顔を上げて二人に視線を送った。

「どうせ無理強いされるんだったら……繭美でも口説いとけば良かったよ」

　無論冗談ではあるが、現時点で優輝と最も親しい異性が繭美だということは事実だ。

「ユウ君……今さら遅いよぅ」