「ったく、お前ずっと独りでいるつもり?」


 式から数日経ち、新婚夫婦が旅行から帰ってきた頃、土産を渡すという名目で優輝は呼ばれていた。しかし顔を合わせれば、話はどうしてもそっちへ――

「そうも言ってられないんだけどな」

 優輝は他人事のように笑う。
 少し前までは生涯独身を宣言していた彼だが、ようやく前向きな姿勢になったようだ。ただ、そこには心変わりがあった訳ではなく「今年中に見つけられなければ、実家に戻ってこい」と、親から指令が下ったからだ。


 十年に及ぶ一人暮らしを難なくこなしてきた優輝には、これからも独りで生きていける自信がある。家事、炊事にも慣れたもので、無駄遣いもせずに貯金も出来ているくらいだ。

「俺なんか繭美がいないと何もできねぇけど」

 新婚山岸が照れもせずにのろけると、優輝は目を鋭くした。

「それはお前が堕落してるからだ」

「ユウ君は、何でも出来すぎだよねぇ」

 繭美もまた大学以来の友人で、当時は山岸と共によく優輝のアパートに食事を求めて転がり込んでいた。
 彼らとは違いしっかりしていた優輝は、親に仕送りなど要求したこともなく、すべてアルバイトで賄えていた。その事実を突き付けて、結婚の必要性は無いと説いた優輝であったが、親は聞き入れなかった。


「結局、世間体気にしてるだけなんだよな」