たしかに、友達はゲームの中では美少女に囲まれ、美少女たちが作った愛のこもったお弁当を食べている。現実では、お弁当どころか市販の飴さえも二人は女子からもらったことがない。

女子に囲まれる修也とは、同じ空間にいても壁が作られている。住む世界が違いすぎる。

かけるは、ずっとそう思っていた。

放課後、かけるは学校から帰るとすぐにゲームセンターへと財布を持って出かけた。財布を入れてあるかばんには、美少女都道府県のキーホルダーがジャラジャラ付けられている。眼帯をつけた宮城ちゃん、チャイナドレスの神奈川ちゃん、着物姿の島根ちゃん。四十七都道府県全ては揃っていないが、二十個ほどは付けられている。

「あれ、オタクじゃね?」

「キモ。ストラップ付けすぎじゃん!」

スムージーを飲みながら歩く女子高生に馬鹿にされたが、今のかけるは何とも思わない。なぜなら、ゲームセンターのクレーンゲームに美少女都道府県が新しくできたと聞いたからだ。

「お気に入りのキャラが取れるかな…」

そんなことを思いながらかけるがゲームセンターへ小走りで向かっていると、アクセサリーショップから出てきた女の子にぶつかってしまった。

「ごめんなさい!大丈夫ですか?」

尻もちをついたかけるが慌てて相手に声をかける。その瞬間、時が止まった気がした。

ぶつかった相手は、健康的に日焼けした肌をして頭にはハイビスカスの花の飾りをつけている。そして着ているのは、日本の和服と中国の漢服が混ざった衣装。

「あいたたた……。あっ、気にしないで〜。こっちも前方不注意だったし〜」