「うん、ダメ」

かけるは素直に頷いた。人間、素直が一番だとかけるは思っている。ツンデレやらヤンデレやらが存在するが、あれはイケメンがやるからいいのだ。

かけるは都道府県たちとゲームの中のように、仲良くなっている。修也のように、かけるをめぐってのバトルは起こらないが、仲良く過ごせるだけでもかけるにとっては幸せだ。

かけるは、いつでもこの家に来てもいいようになっている。そのため家主がいなくても自由に出入りできるのだ。

「かける、頑張ったらおやつの時間にしましょう」

その声に後ろを振り向くと、コーヒーを入れたカップを持ったスーツ姿の女の子。東京ちゃんだ。

「うん!頑張る!」

かけるがそう言うと、石川ちゃんが「じゃあ、おいしいおやつを用意するね〜」とキッチンへと向かう。

幸せだ…。かけるがしみじみそう思っていると、ガチャン、と大きく玄関のドアが開く音が聞こえ、バタバタと廊下を走ってくる。誰かはもうわかっている。この家の主人だ。

「大変だ!!」

修也が肩を大きく上下させながら、リビングのドアを開けた。その慌てた様子に、都道府県たちもかけるも心配する。

「誘拐された……」

そう言って、修也は座り込む。東京ちゃんたちが「大丈夫ですか?」と修也の周りを囲む。