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「ちょっと、弥一!またそんな危ないことして!」

「あーあ、……見つかった。だって全然迎えに来ねぇんだもん、芽唯」

「もう、どうして大人しく待ってられないかなぁ?」



松葉杖を小脇に抱えて、階段の手すりにつかまったまま、片足ケンケンで階段を数段降りてきた弥一は、私に見つかっても尚、怒る私にヘラッと笑った。



「もう松葉杖なくても平気なんだけどな」

「先生がせめて次の検査までは使うようにって言ってたでしょ!」

「あの先生、俺の運動神経なめてるよなぁ」

「まーたそんなことばっかり言って!」



あの事故から、早いもので1ヶ月が経った。


全治2ヶ月って言われていた弥一は、あれから2週間後には退院して、周りが驚く程のスピードで回復中だ。

今週末に骨のくっつき具合を見る検査があって、順調に回復しているようなら松葉杖を取って、リハビリをすることになるらしい。


全治2ヶ月どころか、1ヶ月ちょっとで治しにかかる弥一の生命力には心底驚かされる。


「なぁ、芽唯」



階段を、弥一の元までかけ登って、弥一の支えになるよう肩を組めば、至近距離のまま弥一が私の顔を覗き込む。