「……前にも会ったよな、確か転校生だっけ?」

「それが?」



バチバチと、今にも始まりそうな喧嘩にヒヤヒヤしてる私をよそに


佐倉はニッと口角を上げた。



「大事なもんは、ちゃんと最初から見極めろよ。コイツは先輩の寂しさ埋めるための道具じゃねぇから」

「っ、佐倉……」



弥一の目を見てキッパリ言い切る佐倉に、色んな意味でドキッとした。


都合いい女に成り下がろうとしてた自分に、喝を入れられた気分だったから。


「別に、俺はそんなつもりじゃ」

「どんなつもりでも一緒だ。……もう金輪際、コイツに近づくな」

「……俺と芽唯は幼なじみだ。切っても切れない縁で結ばれてる。転校してきたばっかのお前とは違う」

「だから?」

「芽唯は、俺から離れられないよ」



自信満々に言い切る弥一に、心臓がドクンと嫌な音を立てた。幼なじみの鎖……初恋の鎖は、たしかに弥一と私を繋いで離さない。


私たちの関係はちっとも簡単じゃない。


「佐倉、もういいよ!行こう?」



早く弥一の前から立ち去りたくて
私は佐倉の腕の中を抜け出して歩き出す。