なのに。



「やっぱ、芽唯にそばにいて欲しい」


キュッと私の手を握って、軽々私を引き寄せる弥一に抵抗なんて出来なくて


「ちょ、……弥一?」


弱々しく、ただ名前を呼ぶだけ。


どう頑張っても、最後は弥一が好きって答えに辿り着く。どんな形でも、弥一が必要としてくれるならそばにいたい……


そう、思ってしまう。


このまま、都合いい女に成り下がろうとしてる。
嫌なのに。いつか、私を見てくれたら……そう、願ってしまう。



───グイッ



「っ、!」


弥一に握られている手と反対の腕が、強く後ろに引かれて弥一から引き剥がされた。

驚いて声も出せないまま


私を抱きとめた佐倉の、優しい匂いがする。



驚いてるのは弥一も同じで、口を半開きにしたまま私と佐倉を交互に見つめたあと


今度は悔しそうにグッと下唇を噛んだ。



「もう、俺のだから」



私の腰を抱き寄せて、低く唸る佐倉。
驚いて勢いよく見上げれば


不意に視線を私へと向けた佐倉と目が合ってドキッと心臓が弾む。


「俺の許可なくコイツに触らないでもらえますか、先輩」


弥一に向けられた佐倉の強い視線に戸惑う。
……佐倉は、いったい何を言ってるんだろう。