「昨日、寝るまでずっと考えてた。芽唯のこと」

「……え?」

「ずっと、元カノに未練があるって思ってたし。今も好きか嫌いかって聞かれたらもちろん好きだと思う」


ジリ、ジリと地面と靴が擦れる音。


ちょっとずつ、私との距離を確実に縮める弥一。



「だけど、芽唯のこと考えると冷静じゃいられなくなる俺がいるのも本当。芽唯のこと、彼女が出来てからも心のどっかにずっと引っかかってた」

「っ、」


"心のどっかにずっと引っかかってた"


その言葉に、弥一も私と一緒だって思った。

空白だったはずの弥一と私の1年間。
だけどその1年間で、互いに互いを思い出してモヤモヤしていたっていうのなら


その時間はゼロなんかじゃなくて

知らないところで、私と弥一の時間は続いてたんじゃないか。


……そんなバカな考えが頭の中を埋めていく。


「や、いち」


だけど、どこかで分かってる。
きっと弥一にとっての私と、私にとっての弥一は違う。どんなにお互いがお互いを意識し合ってたって、私たちの気持ちは交わらない。

ちゃんと弥一から逃げないとダメだって、どこかでSOSを出してる私がいる。