「なに?もしかして、意識してんの?」

「は?……ち、違っ」

「今さらじゃん。俺らキスまでしたのに」

「……っ」


フッと笑って、なんてことないみたいな顔する弥一はきっと全然反省してない。


ううん、女の子にとってのファーストキスがどんだけ大事なのかを理解してないって言った方が正しいかな。


私にとっての"あのキス"と

弥一にとっての"あのキス"は


何回目のキスかも、その時の気持ちも、今抱えてる想いも全部違う。


「……ムカつく」

「は?」

「私ばっかりで、すっごいムカつく。結局、弥一の1番にはなれないのに弥一から離れられない自分がムカつく。弥一と幼なじみになんか、」

「芽唯……?」



弥一で良かったなんて思った自分を呪いたい。
好きな人にとっての"どうでもいいキス"が、自分にとっての"大事なキス”なんて。


この先、思い出すたびに辛い記憶が、こんなにも鮮明に脳裏に焼き付いてるなんて。


「やっぱ無理。弥一とは幼なじみに戻れない。ごめん、今日は帰る」

「芽唯?待てって……!急にどうしたんだよ」


弥一に背を向けて歩き出した私を、弥一の腕がギュッと強く掴む。だけど、勢いよくその手を振り払って、今度こそ私は弥一から逃げ出した。