「芹中、なんか話してよ」
木梨のまっすぐな目に、やられる。
「金平糖って、こんなにちっちゃいのに、作るのはすっごい大変なんだよ」
必死に言葉を紡いで、震える唇で届けて。
「えぇー! 知らなかった!」
物知りだね、と笑ってくれる木梨にまた、ドキドキして。
「長いときは2週間もかけるんだよ」
「すごい!」
うんうんとうなずいてくれて、また、嬉しくなって。
「だから、ホワイトデーのお返しでは、“永遠の愛”って意味もあるくらいなんだよ」
昨日調べた知識を、披露する。
「……ロマンチック……」
乙女みたいに顔を輝かせた木梨に、ふっと笑みがこぼれた。
まわりのみんなは、『なんで金平糖の話を?』と不思議そうだ。 教えてなんかあげない。 私と木梨の秘密だ。
「金平糖って、小さくて、ゴツゴツしてて、可愛いだけじゃない魅力があるなぁと思ってたけど……まさか、そんなに深い理由があるとは」
……その理由を知った木梨は、次からのバレンタインで、好きなひとにチョコレートをもらったら……金平糖を渡すのだろうか?