「芹中、おはよう!」



教室に入るなり、木梨の元気な声が聞こえてきた。



いままで、私たちが教室で話すことは滅多になかった。



だから、クラスの女子が、私をターゲットにすることはなかったのだ。



でも、いまのでロックオンされた。 視線が痛い……。



「芹中、あのあと金平糖食べた?」



木梨が、わざわざ私のそばに来て、話しかけてくれる。



「うん」



……それは嬉しいんだけど。



「めっちゃめちゃ甘かったよな! カラフルだったし!」



「うん」



視線が気になりすぎて、まともな返事ができない。



……と。



「芹中、大丈夫?」



木梨が、心配したように、うつむいていた私の顔を覗きこんできて。



「んー、熱はないよな」



おでこに手をあて、体温の確認をしてくるから。



「う、ぇえ……?」



困惑。 キャパオーバー。