「市瀬水希（いちのせみずき）です。．．．よろしく」


高校二年生になってクラスが変わった。仲の良かった子とは離れて．．．はいない。そもそも仲良い子なんていないし。



今、あたしはクラスの皆に自己紹介している。なんのひねりもない、ごくごく普通の自己紹介。


「市瀬さん、よろしくね。じゃあ次どうぞ」


先生が次の人に自己紹介を促すと同時に、あたしは自分の席に座った。


その時、トントンと肩をたたかれ、「ねえ」という声が後ろから聞こえた。


「．．．なんですか」


後ろを振り向くと、一人の女子生徒がニコニコと微笑んであたしを見ていた。


「なんですかって、そっけないなあ。あなた、水希ちゃんっていうの？あたしは五十嵐裕亜（いがらしゆうあ）っていう名前よ。良かったら友達にならない？」


え、友達に．．．？悪い人じゃなさそうだけど、なんであたしなんかと．．．。


でも、友達ならいっか。


「．．．わかった。いいよ」


「ほんと？よかったぁ！もし断られたらどうしようかと．．．」


そう言って見せた困ったような笑顔は、綺麗だな、って思った。それもそのはず。今初めて話したけど、この人は間違いなく「美人」に分類されるタイプの人間だ。サラサラの黒いロングヘアに、優しげな二重の目。抜群のスタイル。多分このクラスで一番綺麗だと思う。