「真未さん、いつあのお客さんと仲良くなったんですか?」

惣菜パンを焼き終えてある程度冷ましてからフロアに出て陳列していると千夏ちゃんに話しかけられた。

「仲良くなったって言うか、お店の前で何か悩んでいたみたいだから勝手に話しかけただけだよ」

「真未さんのその誰にでも話しかけられるところ、羨ましいです」

「私だって誰にでもってわけじゃないけど……千夏ちゃん、話しかけたい人でもいるの?」

「そうなんですっ!
出来ればお近づきになりたいイケメンさんがいるんですけど、なかなか話しかけられなくてー!」

「ちょっと千夏ちゃん、落ち着いて」

バンバンとカウンターを叩きだした千夏に真未は慌てて肩を叩く。
客足が落ち着いてきた時間帯と言ってもまだイートインスペースには少なからずお客さんがいるのだから暴れないでいただきたい。

「ご、ごめんなさい」

しゅん、と肩を落とした千夏ちゃんの肩をそのままポンポンと叩く。

「気にしないで。
それより、イケメンさんって同じ高校の人?」

「いえ、最近ほぼ決まった曜日に来るお客さんなんですけど……すっっっごく、イケメンなんですよー!!」

「うん、もう一回落ち着こうか」

テンションが上がりだした千夏に今度は少し強めに言うと、慌てて片手を口に当てていた。
最近ほぼ決まった曜日にやって来るイケメンのお客さん……なんとなく思い当たる人物がいるような気がして真未は思わず顔をしかめた。