話を聞くと、どうやらここのパンにハマってよく買っていたら弟に、太るよ。と言われてしまったことが気になってしまったらしい。
それで我慢しようと思っていたけれどやっぱり食べたくて……と店の前をうろついていたと言う。

「こんなにスタイルいいのに……むしろ少し太った方がいいと思うんですけど」

「や、そんなことないですっ!
それに、体重が増えたら怒られちゃう……」

「怒られる?弟さんにですか?」

「弟にも、他の人にも……」

苦笑するその人に、なんだか大変そうだなぁ。と思いながら窓ガラス越しに陳列されたパンを見てその中の一つに目をつけると、一緒に来てください。とだけ言って店内に入る。

「いらっしゃいませー!……って真未さん?
珍しいですね、お買い物ですか?」

「うん、ちょっとね」

レジにいた千夏ちゃんに軽く手を振り目的の場所に向かうと、その後ろを女性が慌ててついてきた。

「これなんてどうです?ベーグルサンド。
普通のパンと違ってモチモチで食べごたえありますし、中にたくさんの具材を挟んでるので一つでも満腹になります。
それに、具材によって変わりますけど基本低カロリーです」

「低カロリー……」

なんだか販売促進のようになってしまったけれど興味を持ってもらえたようだった。

「よかったら値札にもカロリーが書いてあるので参考にしてみてください。
では、私はこれで」

あまりずっと傍にいては選びにくいだろうとその場を離れようとすると、その女性は慌てて顔をあげて満面の笑みを浮かべた。

「ありがとうございますっ!
これで我慢しなくても大好きなパンが食べられそうですっ」

その笑顔に既視感を覚えつつも笑顔で会釈してその場を去った。
やはり、ここではないどこかで会ったことがあるのだろうかと首を捻りながら真未は裏口へと向かった。