あたしを慰めるために一生懸命になってくれているのがわかった。


でも、別れたばっかりで新しい出会いなんて考えられないし、運命の出会いなんて来ないんじゃないかと思えてしまう。


「そんなに沈んだ顔しないでよ。今日は沢山泣いても、明日になったらまた可愛い朱里に戻らないと! じゃないと運命の王子様に見つけてもらえないよ?」


『運命の王子様』


というセリフに思わず笑ってしまった。


そんな、おとぎ話みたいなことあるはずない。


それなのに、佐恵子は突然笑い出したあたしにキョトンとした表情になる。


どうやら本気で言っていたようだ。


涙を流しながら笑うあたしに、「さては信じてないんでしょ」と、佐恵子が頬をふくらませた。


「そんなことないよ。信じてる」


「本当に? 朱里にはいいこと教えてあげようと思ってたんだけど、運命の王子様の存在を信じていないなら、教えないでおこうかなぁ?」