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5時間目が始まる前の保健室には、誰の姿もなかった。


先生もいないが、鍵が開けっぱなしになっていたからすぐに戻ってくるのだろう。


「とりあえずここに座って」


佐恵子がそう言って、あたしに丸椅子を差し出してくれた。


そこに座ると安堵感が襲って来て、余計に涙があふれ出して来る。


あたしの泣きっぷりを見て佐恵子もなにか感づいたようで、ずっとあたしの背中をさすってくれている。


「大丈夫?」


5分間ほど思いっきり泣いて顔を上げると、優しくほほ笑んだ佐恵子がいた。


「……別れた」


鼻声でそう言うと、佐恵子の表情が痛そうに歪む。


「そっか」


それだけ言って、またあたしの背中をさすった。


「好きな人ができたんだって」


「えぇ? カオル君、そんな風には見えなかったのにね……」