いつでもきみのそばに



たしかに、俺は小学生のときからサッカーをやっていた。


中学でもサッカー部に入って、1年生のときから試合にでれるくらいのレベルだった。



でも、あの日、舞が死んでしまった日以来俺はサッカーをやめた。

やめたというよりはできなくなったというほうが正しいのかもしれない。


あのときの俺はなにもかもが嫌になっていた。



―――それに舞が苦しんでるのに気づいてあげられなくて自分だけ楽しい思いをしていたのが馬鹿みたいで。




「別になんでもないよ、ただ飽きただけ」


「もったいないよ、大ちゃん上手だったのに。今からでも遅くないんじゃないかな?」


舞がどうしてそんなこというのかが理解できなかった。



「いいよ俺はもう」


「でも・・・」


「舞には関係ないだろ」



俺はそう冷たく言い放った。




「そう、だよね。ごめんね」


ガチャン

舞はそのまま屋上からでていった。


「くそっ」


どうしてこうなった?

なにがいけなかった?


なんで舞と喧嘩しなくちゃいけないのか。

でも、舞の気持ちが本当にわからなくて。


俺の気持ちなんてなにも知らないくせにって思った。



下をみるといつの間にか人が少なくなっていて。


どうやら文化祭がおわったみたいだったけれど、俺は教室に戻る気力がなくていつまでも空を眺めていた。



あれから俺と舞は全然話さなくなってしまった。


謝らなきゃ。

そう思っているのに中々話しかけられなくて。


小さいころは本当に些細なことでたくさん喧嘩をしたけれど、次の日にはお互い全然気にせず話していた。



それなのに今回は違う。


朝家をでるといつも舞の姿があったのにいなくて。


学校についても俺が舞に近づくと舞はふらっとどこかにいってしまった。




「最近元気なくない?」


前の席の人が話しかけてきた。

たしか早瀬光(はやせこう)って名前だ。


2学期がはじまり席替えをしたばっかでまだ話したことがなかった。


それに俺は高校に入学して以来ほとんど舞としか過ごしていなかったから男子で友達と呼べる人はいなかった。


「舞といろいろあって」


「ああ、菊池さんか。いつも一緒にいるもんね。付き合ってるの?」


「いや、俺の一方的な片思い。そして今は喧嘩中」


「なるほどね。なんか菊池さんって不思議な感じする」



「え?」


「なんかオーラが違うっていうのかな?」


オーラが違う?

俺にはそうみえたことはなかったけれど、ほかのひとからしたらそうみえるのだろうか。


「まあ仲直りできるといいな」


「おう、さんきゅ」


初めて話したけれど、早瀬くんに元気を少しもらった。






「ピンポーン」


俺は舞の好きなものを買って家にきた。

学校で避けられるならもうこれしか手段がないと思ったのだ。


舞の家に行くのは舞の葬式以来。

それ以降なんとなく行きづらくて。

今も内心ドキドキしていた。


「はーい。あれ、大輔くん?久しぶりね」


「ご無沙汰してます。舞いますか?」


「うん、いるわよ。あがってあがって」


おばさんは舞が死んでしまってからすごく痩せてしまっていたけれどいまは普通だ。


顔色もいいし笑っている。



リビングにあったはずの舞の仏壇もなくなっていて。

やっぱり舞は死んでいなかったのか、そう思うくらいだった。





「コンコン」


「はい?」


「俺だけど。入っていい?」


「・・・いいよ」


少し沈黙があったけれどそういったので俺はドアをあけた。


部屋もあの頃と変わってない。




「どうしたの?」


「いや、文化祭のときごめん。舞のこと突き放すようなこといって」


「ううん、大ちゃんのせいじゃないよ。私こそごめんね。大ちゃん避けるみたいにして」


「舞・・なあ、どうしてあのときいきなりサッカーの話なんて?」


「大ちゃん、何も覚えてない?」


「え?」


なんだろう。俺はなにか大事なことを忘れてしまっているんだろうか。


「体育館で3年生がバンドやってたじゃない?」


「うん、やってた」


「そのとき歌ってた歌」


「歌?」


そういわれて思い返すとメロディーが頭の中に流れてきた。

でもそれがなんなのか俺にはわかんなくて。