「どうしたの?」
「俺、舞のことが好きだ。小さいときからずっと。俺と付き合ってください」
もうすぐてっぺんになるというタイミング。
ドキドキドキドキ
俺の心臓はやばいくらいにうるさくて。
でも・・・舞は暗い顔をしていた。
「ごめん、大ちゃん。大ちゃんとは付き合えない」
「・・そ、っか」
衝撃で倒れてしまいそうだった。
どこかで期待している自分がいた。
舞も俺と同じ気持ちだろうって思ってた。
なんて馬鹿なんだろう。自惚れてたんだろう。
「ごめんな突然、そうだよな」
「大ちゃん、ちがうの、これは・・」
「いいって。大丈夫だから」
言い訳なんて聞きたくなくて。
舞の言葉を遮ってしまった。
きまずい空気のまま俺たちを乗せたゴンドラは下に到着した。
「かえろう、か」
「うん、そうだね」
そのまま電車の中でも駅から家までの間も特に会話が弾むことはなくて。
「じゃあ、月曜日な」
「うん、おやすみ」
それぞれの家の中へと入った。
「大ちゃんおはよ」
月曜日、いつもの時間に家をでると舞がいた。
少しそれに安心した。
本当は避けられちゃうんじゃないかって思ってたから。
「おはよ」
「大ちゃん土曜日はありがとね」
「いや、こっちこそ久々に楽しかったしありがと」
「それでね、あれから考えてみたんだけど、やっぱり大ちゃんとは幼馴染でいたい」
改めていわれたその言葉は俺の心に強く突き刺さった。
舞は悪気があっていったわけではないと思う。
でも告白した俺にとってはその言葉は重く響いた。
「わかった」
それしか答えられなかった。
深く傷ついたことを舞に悟られないように。
「大ちゃん、またどこかいこうね」
それによくわからない。
どうしてこんなに俺を誘うのか。
でも、きっと舞は俺のことをなんとも思ってない、ただの幼馴染だから誘えるんだろう。
それに舞は学校で俺と以外話してるのをみたことがない。
明るい性格だからきっとすぐに友達なんてできると思うのに。
やっぱりあのときのことが関係しているのか。
そうだとしたら、舞が頼れて唯一気を許せているのは俺だけだ。
なら、俺はその舞の気持ちにこたえてあげたいと思う。
「おう、いこうな」
複雑だけど、それでも俺は舞の隣にいることを選んだ。
あれから俺たちの関係はとくに変わることなく幼馴染として仲良くやっていた。
「大ちゃん、これあげる」
「なにこれ?」
放課後、教室で小さな箱を渡された。
「あけてみて!」
そういわれたのであけてみるとそこにはカップケーキが入っていた。
「どうしたのこれ?」
「今日家庭科でね、作ったの。ほら、選択科目で大ちゃんとってないでしょ?」
俺たちの学校では選択科目で家庭科、音楽、美術、書道を選ぶことになっている。
どれも女子に人気がありそうなやつばかりで、だいたい男子は音楽か書道に密集していて俺も音楽を選択していた。
「舞の分は?」
「わたしはたくさん作って授業中に食べたから大丈夫」
「どーせ余ったほかの人の分とかも食べたんだろ」
「あはは、ばれた?」
「ばればれ」
「それはいいとして!おいしいから食べてみて」
はぐらかされた気がするけれど、せっかくもらったので一口食べる。
「うま」
「でしょ?」
「やっぱ食い意地あるだけあって、料理も上手だな」
「食い意地は余計!」
舞は小学生のころから料理が得意で、特にお菓子作りが得意だった。
バレンタインは幼馴染特権なのかいつもまわりにあげるものと違うものをくれて、それが嬉しかったのを覚えている。
それに舞が死んでしまってから、舞が作ったものを食べるのは今日がはじめてだった。