いつでもきみのそばに



「はは、冗談だろ」


「もー」


だから、そのぷくっと頬を膨らませる顔やめろ。

無自覚のがずるい。可愛すぎて抱きしめたくなる。



「ねえそれよりさ、大ちゃん約束覚えてる?」


「ああ、負けた方がおごるってやつな」


実はあのあと賭けをしていた。

テストが終わったら遊園地にいこうと話していてその日の代金を負けた方が全額支払うって。



まあ男だし、好きな女の子のために払うなら全然いい。


というか、勝っても舞に全額支払わす気はなかったんだけど。


「次の土曜でいいんだよね?うわーたのしみ!」


それに舞がこんなにも喜んでいるからいいんだ。


遊園地デート。

それは俺にとったら告白するチャンスでもあって。

俺は楽しみでもありつつ、不安な気持ちもあった。


もし舞に告白して断られたら。


いまの関係が崩れてしまったら。



「大ちゃんはいいの?」


「え?」


「いや、わたしが遊園地がいいっていたけど、大ちゃんはいいのかなって」


「うん、俺も楽しみだよ」


「よかった」




舞は俺の告白をきいてどんな顔をするだろうか。


どんな返事をするだろうか。


喜んでほしい、いつもの笑った顔をみせてほしい。



そして俺の、彼女になってほしい。



それが俺の今の一番の願いだった。



ピンポーン

チャイムがなって外にでると舞が立っていた。

今日は遊園地デートの日だ。


「どう?」


舞は少し化粧もしていて、服装もいつもと違ってカジュアルで大人っぽい。

遊園地で走り回れるようにスカートはやめたのかパンツ姿が新鮮だった。


「うん、いいと思う。そういうのも似合う」


「あはは、ありがと」


少し照れる舞の顔はチークのせいか余計赤くみえた。


「よし、いくか」


「うん、れっつごー!」






電車に乗ること約1時間。

ようやくたどりついたときにはもうすでに疲れていた。

今日は土曜だからか電車は激混みで。

立っているのもやっとだった。


「はあ、疲れちゃったね」


舞は身長が低いからきっとつぶされてもっとつらかっただろう。

俺が前にたってなるべく負担をかけないように頑張ってはいたんだけど。


「な。電車ってあんな混むんだな」


高校に行くときも電車だけどあそこまで混んでいる電車に乗ったのははじめてだ。




「よし、でも気を取り直して遊ぼう」


「そうだな」


せっかく苦労してここまできたんだからめいいっぱい楽しんで帰ろう。






「高校生2枚で」


そういって俺が財布を出すと横で舞も財布をだしてきた。


「いいよ、俺テスト負けたし。約束は約束だから」


「うーん、なんかやっぱり悪いなって思って」


「いいから、今日は甘えとけ」


「・・わかった。大ちゃんありがと」


すごく申し訳なさそうな舞だったけれど、素直に聞いてくれた。



チケットを受け取って入場すると


「まずはジェットコースター!」


そういって舞が走り出した。



さっきまでの申し訳なさそうなしんみりした空気はどこにいったんだよ。


そしていきなりジェットコースターかよと思いつつ俺も舞のあとを追った。







「はあー」


あれからいろんな乗り物にのって疲れた俺たちはベンチに座って休憩することにした。


「舞、はしゃぎすぎ」


「大ちゃんだって」


そう、俺たちは高校生とは思えないくらいはしゃいだ。

舞とは小学生のときに家族ぐるみで一回いったきりだ。

俺たちはその頃に戻ったみたいに遊んだ。



嬉しかった。

二度とこんな時間は訪れないと思っていた。



舞が死んでしまってから俺は楽しむということを忘れて生きてきたから。




「大ちゃん、ほんとにありがとね付き合ってくれて」


「こっちこそ。ありがとな」


「ねぇねぇ、最後にあれのろ」


そういって指さした方向には観覧車があった。


驚いた。


乗りたいと思ってはいたけれど、舞のほうからいってくれるとは思わなかったから。



「いいよ」


俺はそれを悟られないように冷静に答えた。