いつでもきみのそばに



「せんせー、いつまでそこにいるんですかー?部室の鍵どうしたらいいですかー?」


「ああ、いまいく」


今はここの生徒たちに明るい未来があるように、苦しむ子がいないように、俺はこの生徒たちを必死に守っていく。



そして舞が生きたかったこの世界で、舞の分まで生きるから。




「大ちゃんはね、真っ白」


「なんで?」


「何色にでもなれるから」


「・・・は?」


「白ってこれから何色にでもなれるでしょ?いろんな色を重ねることができるし、なりたい色になることができる。まだまだこれからってことだよ」


「そんなこといったら舞だって」


「ううん。わたし太陽でいい。大ちゃんだけの太陽。これからもずっと大ちゃんを照らし続けていける、それでいいの」


いつもこの夢をみるとここで舞が消えて俺は目が覚めた。


でもこの会話にはまだ続きがあった。



「じゃあ俺はいつか虹になるよ」


「虹?」


「真っ白から虹になったらすごくない?一気に七色。俺それくらいいろんな自分を持ちたいな。それに・・」


「それに?」


「虹は太陽がないとみれないだろ?だから俺と舞はいつも一緒だ」


「大ちゃん・・ありがとう」


このときはあんまり深い意味でいったわけじゃなかったけれど。

でも今は本当にそうだといいなって思う。


いつか虹になって、舞のそばにずっといられたらなって。


そのために俺は自分を磨いてさらに成長して、舞に誇れる自分になる。


そしていつか虹になれたら、今度は舞とずっと一緒に生きていきたい。




「本当に好きだと思ったこと一度もないの?小さいときから一緒なんでしょ?」


咲からこう聞かれたとき、わたしはつぶやくようにこう答えた。


「すき。いまでも大好き」


大ちゃんがこっちの会話を盗み聞きしてるのには気づいてたから。

普通の声の大きさでいったらきっと聞かれてしまうと思った。


本当は、大きな声で叫びたいくらいだったけれど。

でもこのときのわたしはもう残り10日間の命だった。


それなのに、こんなこといってしまったら。

大ちゃんを余計苦しめてしまうだけだと。


遊園地に行った日、わたしは家に帰ってから大声で泣いた。


あのとき、わたしもすきだよっていえてたらどれだけよかったか。


付き合ってみることも考えた。

残り5か月を恋人同士で過ごすのもありかもしれないって。


でも、それでもきっと大ちゃんは悲しむし、なによりわたしもつらくなる。


消えてしまうことが怖くなって、大ちゃんに弱音を吐いてしまうかもしれない。


どうにもならないのに、大ちゃんに助けを求めてしまうかもしれない。



そんなこと大ちゃんにとって負担でしかないと思ったから、わたしは大ちゃんと幼馴染でいることを選んだ。


その選択を後悔していない。



大ちゃんはこれから先の人生できっといろんな出会いがあって、いずれ誰かと結婚するだろうから。


わたしのことなんて忘れて、幸せになってほしい。


空から大ちゃんを見守る、わたしはそれだけで幸せだから。






はじめて菊池さんをみたとき、あのときと同じだって思った。


俺はひょんなことから霊感が強くなった。


それは、俺の大事な人を失ったときから。

そのとき俺はあとを追って死のうとした。


でもそのときにみえたんだ。

死んでしまったはずの友達の姿が。





「なあ光。俺、お前には生きててほしい」


「とも、き?」


なんでこのとき友達の姿がみえたのか俺にはわからない。


菊池さんと違って友達がみえたのはそのときだけだったから。


でも、俺は智樹の言葉があってこうして生きている。


大輔に言った言葉は、自分自身にもう一度言い聞かせた言葉でもあったんだと思う。


きっと死んだ人間からしたら自分を追って死のうとするなんて悲しいだけなんだろうから。



はじめて菊池さんをみたとき、死んでから姿をみせた智樹に似てるって思った。

でもあれからずっといたし、ほかの人にもみえていて、なにより大輔と仲良さそうに話す姿をみたらきっと俺の気のせいだって思った。

でもあのあと、はじめて大輔と会話をした数日後、菊池さんから話しかけてきた。


「大ちゃんと仲良くしてくれてありがとね」


「いや、仲良くなんてまだそんな・・」


「私の代わりにこれからもずっとそばにいて支えてあげてね」


これを聞いた時俺は思ったんだ。


やっぱり気のせいじゃないんだって。