いつでもきみのそばに



「舞、遅くなってごめん。俺頑張るから。見守っててな」




「不思議なんだけどね、最近まであの子がこの家にいたような気がするの」


お線香をあげおえておばさんが淹れてくれたお茶を飲んでるときにおばさんがそう口にした。


「え?」


「おかしいでしょ?もう3年もたつのに」


「いえ。俺もそんな気がしてました。それに今だって舞はずっと近くで見ててくれてると思います」


半年間舞がいたという記憶はみんなから消えてしまったらしい。


あのあと教室に戻ると舞が座っていた席はなくなっていた。


それに対して誰もなにも不審に思っている様子はなく、いつも通りだった。



牧瀬と三浦も。


きっと舞ははじめから自分の運命がわかってたから友達を作ろうとしなかったんだろう。


でも、遠足の日、舞には友達ができた。


きっと舞の中で葛藤があったんだと思う。


楽しい思い出ができてしまったら。

牧瀬と三浦は記憶自体がなくなってしまうから関係ないけれど舞は違う。


きっと余計消えてしまうことがつらくなるんだろう。


それでも、舞は最後まで牧瀬と三浦と友達でいることを選んだ。





「そうよね。あの子は優しい子だったから。きっと今もどこかでわたしたちのこと見守っててくれてるわよね」


「はい。俺はそう信じてます」


「大輔くん、今日は本当にきてくれてありがとね」


「いえ、また遊びに来ます」


「まってるわね」


おばさんが元気そうでよかった。


俺はこの半年間がなかったらきっとずっと落ちこぼれたままだったのに、まわりはとっくに前を向いて生きていた。





家に帰って部屋に入ると机の上に見覚えのない封筒と紙袋がおいてあった。


母さんかな?そう思って近づいて俺は驚いた。



大ちゃんへ



封筒にはそう書いてあった。


俺は急いであけて手紙を読んだ。



大ちゃんへ


驚いたよね?ごめんね。
伝えたいことがたくさんありすぎて、でも伝えられる時間がなさそうなので手紙にしました。

大ちゃん、まずは本当にごめんなさい。突然消えてしまうこと。
大ちゃんの前に現れたことが正解だったのか、今でも正直わかりません。

残された立場の人がどんな気持ちなのか、それは死んじゃったあとみんなのそばにいたからわかってた。それをもう一度経験させてしまって、本当にごめんなさい。


でも、それでもわたしは嬉しかった。

大ちゃんが笑うようになって、前向きに生きるようになって。
それを近くでみてこられたこと、本当に嬉しかった。


わたしね、大ちゃんの幼馴染でよかった。

わたしの13年間とこの奇跡のような半年間。

大ちゃんのおかげでずっと楽しかったよ。



そして、本当にありがとう。

わたしの前で死という言葉を使わなかったことが嬉しかった。
本当は気づいてたのに、たくさん聞きたいこともあったと思うのに全部飲み込んでわたしとの時間を過ごしてくれた。

わたしのわがままをたくさん聞いてくれた。

駅前でクレープを食べたこと、映画を観たこと、遊園地デート、夏祭り、水族館デート、文化祭を一緒にまわったこと、体育祭、遠足、そしてなによりわたしの誕生日をお祝いしてくれたこと。

こんなに幸せなことあっていいのかなって思うくらい幸せでした。



ねぇ、大ちゃん。生きてください。わたしの分まで生きてほしい。

わたしがみれなかったたくさんの景色をこれからもみてください。

そして幸せになってね。


大ちゃん、大好き。






追伸 

紙袋の中身は早めの誕生日プレゼントです。
無理強いはしないなのでいらなかったら捨ててください。



俺は涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになりながら紙袋に手を伸ばした。

あけてみるとそこにはサッカーボールが入っていた。

そしてそこにも手紙がついていた。





おせっかいでごめんね。
でもね、わたしやっぱり大ちゃんにサッカーをもう一度やってほしかったの。

わたしのせいでやめちゃったことがどうしても悔しかった。

大ちゃん小さいころからいってたでしょ?

「僕の夢はサッカー選手になることだ」って。

小さいころから陰でずっと努力してきたの知ってるよ。
大ちゃんがサッカー大好きってことも。

大ちゃんの夢はわたしの夢でもあったの。



大ちゃん。今からでも遅くないよ。


大ちゃんは真っ白なんだから。

これからなりたい自分に、なりたいように描くことができる。


わたしは、ずっと見守ってるよ。


わたしは大ちゃんの太陽だから。

大ちゃんがつらいときは道を照らしてあげるからね。


ずっと、大ちゃんを応援してます。







あれだけ泣いたはずなのに、溢れる涙をとめることができなかった。

サッカーボールを抱きしめながら声が枯れるくらい泣いた。



なんで俺は意地をはってたんだろう。

舞はずっと俺のこと応援してくれていたのに。

文化祭のときだって俺のために泣いてくれた。

舞が生きているうちにサッカーをしている姿をみせてあげたかった。

俺がへたくそなときからずっと近くで見ててくれてて、練習をみてるだけなんてつまらなかっただろうににこにこしながら頑張れって応援してくれた。


舞のためにやめたなんて、そんなの舞に失礼だった。

舞はそんなこと一度だって望んでいないのに。



俺はいてもたってもいられなくなってサッカーボールを手に外にかけだした。