いつでもきみのそばに






「うーん、おいしい。やっぱりチョコバナナ最高!」

チョコバナナが好きなところも変わってない。



「ねぇ、大ちゃんのほうも一口ちょうだい」

食い意地がすごいところも変わってない。



「あー、幸せ」

口のまわりにクリームいっぱいつけて子供っぽいところも変わってない。



「よかった、舞が笑ってて」


「そりゃーこんなおいしいもの食べたら笑顔になっちゃうよ」


「たしかにうまいな」


「大ちゃん、これからもっといろんなところ一緒にいこうね」




朝のうちは頭が混乱していてよく舞をみれていなかったけれど、よくみるとあの頃よりも少し背が伸びていて顔つきも大人びてみえた。


まるであの頃からずっと生きていたように。




俺は、舞のことが小さいときから好きだった。



元気で明るくて、笑顔が絶えなくて。


でも甘えん坊で泣き虫なところもあって。


「舞も真っ白だよ」


俺は小さくそう口にした。


あのとき言えなくてずっと後悔していた言葉を。


「なんかいったー?」


「なんでもない。そろそろ帰ろうか」


「うん、そだね」


俺は舞の後姿をみながら、このありえない現実がずっと続くように、舞にもこの先の未来があるようにと強く願った。




「大ちゃん、お待たせ」


今はゴールデンウィークで休みなので、映画をみにいくことになった。


全然映画なんて観に行かないからなにをやっているのかさえ知らなかったけど、舞がみたいものがあるというのでそれをみることにした。


「なあ、それ本当に食べるの?」


チケットを買い終わったあと、食べたいものがあるという舞を待っていた。


そしてやっと戻ってきたと思ったらその手にはLサイズのポップコーンがあった。




「うん、たべる!え、大ちゃんも食べるでしょ?」


「うん、食べなくはないけど、それにしてもSサイズでもよかったんじゃ?」


「いいの!おいしいものはたくさん食べておかないとね」


舞は昔から食べるのが好きだった。


おいしいものに目がなくて、でもそのわりに細くて不思議なくらいだった。


「ま、いいけど。じゃあいくか」


なんでも有名な映画らしくてほぼ席はうまっていた。



「たのしみだね」


「どんな映画なの?」


「それはみてからのおたのしみ!」


舞がみたいといったやつが何なのか今日まで教えてくれなかったので内容も何もわからなかった。


たくさんの予告映像が流れたあと、暗くなり上映がはじまった。



俺は序盤のほうでどんな映画なのかわかって、舞がどんな気持ちでこの映画を選んだのかわからなかった。


主人公の女の子が交通事故で死んでしまう話だった。


そしてその女の子と関わりがあった人たちのそれぞれの未来が描かれていた。



鼻水をすする音、ハンカチを手にする人が目に入って。


舞のほうをちらっとみると舞も泣いていた。


音をたてることもなく、ハンカチを手にするわけでもなく、でも溢れんばかりの涙が舞の目から零れ落ちていた。


ただその目は瞬きすることなく真剣なまなざしだった。


自分と重ね合わせてみているかのような、俺にはそんな風にみえた。


俺はそのあとも舞から目が離せなくて、最後のほうは映画の内容すら頭に入ってこなかった。






「はぁ、よかったね」


「・・・だな。なあ、舞、あのさ」


「ん?」


「・・やっぱりポップコーンでかかったんじゃない?」


本当は舞に聞きたかった。


舞の記憶はどうなっているのか。

自分が死んでしまったことに気づいているのか、それともそんな記憶なんてないのか。



でも聞けなかった。




「たしかに。たくさん余っちゃった。もったいないなー」


だから全然関係ない話題をふってしまった。

本当はポップコーンのことなんてどうだっていいのに。


「これにいれてけば?」


そういって俺はもっていた大きめの袋を渡した。


「え?いいの?大ちゃんありがとう」


捨てることが惜しかったらしく、舞は持って帰ることを決めた。



それからは普通だった。


舞は特に映画について話題をふってることはなく、少し街をブラブラ歩いたあと帰った。