カレーのいい匂いがそこら中から漂ってきたころ、飯盒で炊いていたごはんもできて昼食時間になった。
「いただきます」
「うまい」
「おいしいー」
「カレーってこんなおいしかったっけ?てかごはんもいい感じに炊けたね」
「ね、いい感じ。おこげもおいしい」
「舞のおかげだね」
それぞれが思い思いの感想を口にする中、牧瀬が舞を下の名前で呼んだ。
「いま、舞って・・」
「いやだった?せっかくだし仲良くなりたいなって」
「ううん、嬉しい。咲ありがと」
「ええ、ずるいわたしも舞って呼んでいい?」
「もちろん。友美もよろしくね」
そういって舞と牧瀬と三浦は握手していた。
舞、よかったな。
舞にも友達と呼べる人ができて本当によかった。
そう思っていたのになんとなく舞の様子がおかしい。
笑っているはずなのに暗い表情をしているようにみえる。
でもそれに気づいたのは舞をよく知る俺だけで、ほかの3人は全く気づいていなかった。
そのあと片付けをしてレクが始まるころには舞の様子は戻っていた。
「舞、友達できてよかったな」
バスで学校まで戻りそのあと解散になった俺と舞はいつものように帰っていた。
「うん」
「さっきもちょっと思ったんだけど、元気ない?」
「そんなことないよ、でもちょっと疲れちゃったのかも」
たしかに今日舞はよく動いていたからそれのせいなのか。
「ごめんね、じゃあまた明日」
「うん、ゆっくり休めよ」
「ありがと」
家の前につくと舞はすぐに家にはいっていった。
俺は勝手に舞の嬉しそうな顔がもっと見れると思っていた。
友達できたよって喜ぶかと思ってた。
俺は舞のことなんてなにも知らなかった。
遠足の日以来舞は牧瀬と三浦と行動するようになった。
嬉しい反面寂しい気持ちもあった。
なんだか子が育っていったような感覚だった。
「舞ってさ、本当に渡曾くんのことなんとも思ってないの?」
「うん、ただの幼馴染だよ」
昼休み。
俺も同じ教室内にいるのにきくかその質問。
そう思ったけれどそれよりも舞の言葉に傷ついた。
ふられたしわかってるはずなのに。
「えー。でもお似合いだと思うんだけどな」
「うんうん」
牧瀬と三浦がすごい俺のこと持ち上げてくれてるんだけど、舞はそれに対して何もいわなかった。
「本当に好きだと思ったこと一度もないの?小さいときから一緒なんでしょ?」
おいおい、どんだけ聞くんだよ。
ないっていうに決まってるだろう。
もうこれ以上傷つきたくないのに。
「・・・・」
「え?なんて?」
「全然聞こえなかった!」
舞がなにか答えたらしいけれど聞こえなかったみたいだ。
「そんな気になる?」
俺がずっとそっちの会話に耳を傾けていたからか、光が話しかけてきた。
「そりゃ、まあ・・・」
「きっと菊池さんは大輔のこと好きだとおもうよ」
「え?なんで?いやいや、だって俺断れたんだよ?」
「それは、、俺からはいえない」
「なんだよそれ」
「ごめん」
光はそういうと前を向いてしまった。
光の言葉は嬉しかったけれど、でも無責任にそんなこと言わないでほしい。
俺が光と話してる間に舞たちの会話も終わっていたらしくいつの間にか会話は聞こえなくなって。
そのままチャイムがなり午後の授業がはじまった。
「おはよー」
「おはよ」
11月も半分すぎだんだん寒くなってきた。
まわりをみるとすでにマフラーをしてるひともいて。
光もその一人だった。
「マフラーあったかそうだな」
「俺寒さ本当に無理なんだ」
「まあたしかに俺も苦手かも」
「そんなことより・・・」
「ん?」
「菊池さん、危ないかも」
「それってどういう意味?」
「もしかしてだけど、菊池さんって」
一度死んでる?
誰にも聞こえないように俺の耳元でそうささやいた。
「っ」
「その反応ってことはやっぱりか」
「なんで、どうして」
「俺そういうのわかるんだ。それより亡くなったのはいつ?」
そういわれて俺ははっとした。
11月19日。それが舞が亡くなった日だった。
そして今日は11月19日。
「もしかして舞は・・」
「うん、きっとそうなんだと思う」
舞は今日いなくなる?
そんなこと考えたくないのに、今までのことを考えると全部つじつまが合う。
舞はそれに気づいてたから・・・
教室を見渡すと舞の姿がなかった。
「光ごめん、先生にうまくいっといて」
俺はそれだけいうと教室から飛び出した。