「あぁ、そうなのか。じゃあ、軽音部に惹かれてるんじゃないか?」

「そう…ですね、軽音部のサックスってかっこいいなと思って。中学の時は軽音が無かったのでいいかなとは思ってます。」

言葉を選んでそう言うと、椿山先輩はこくりと頷いた。

「俺もだ。軽音部に入ろうかと思ってた。でもまぁ、俺の従兄が星花の吹奏楽部に居てな、誘われたんだ。」

「そうなんですね…」

ふんふんと頷いていると、由香ちゃんが困ったように扉の方を向いた。

「でも、やっぱり吹奏楽部よりは軽音部の方がいいのかも。吹奏楽部は差が激しいから…」

「差?」

由香ちゃんは私の目を見て、辛そうに頷いた。

「A組とそれ以外の差。ここにいるのは、全学年のA組だけ。他の子達は違う音楽室にいるの。」

「あ…」

分かっていた。

この学園内に階級が存在すること。

でもやはり、言われてみると強い衝撃だった。

「ここに来る前、私その音楽室に行ったよ。すぐ、こっちに行くようにって言われたけど。」

由香ちゃんはこくりと頷いた。

「桜夜ちゃんはA組だから。」

「ねぇ、どうして自己紹介もしてないのに、私がA組だって分かったのかな?」