放課後。

私は視聴覚室へと向かっていた。

軽音部の二人は係の用事があるらしく、あとからすぐ来るらしい。

少し緊張しながら、私は視聴覚室の扉をノックした。

「はーい」

中から聞こえて来たのは少し高い男の子の声。

ほんの少しして、静かに扉が開いた。

彼は私を見て、少し目を丸くした。

「見学?」

「え、あ、はい…」

こくこくと小さく頷くと、彼はドアを引いて中に招き入れてくれた。

「まだ先輩達が来てないから、少し待って…ってわっ!?」

急に驚いたように声を上げた彼は、ぺこりと腰から折って礼をした。

「え?」

「2年生!?す、すみません!僕は、紅星実里。…です。1年A組。…です。」

少し顔を赤らめ、下を向く紅星くん。

私のことを1年生だと思ったらしい。

まぁ、編入生なんてそう多くないだろうし…

「驚かせてごめんなさい。今年編入してきました、2年A組の葉月桜夜です。」

私がそういうと、紅星くんは少し目を瞬いた。

「ん?」

私、なんかおかしなこと言ったかな?

すると、紅星くんはブンブンと首を振ってから、ふわっと笑った。

「よろしくね、桜夜センパイ。」