24話「思い出の場所と香り」
斎との大学生活は、甘くて、切なくて、でも、楽しくて刺激的なものだった。
斎は基本的には優しいけれど、少し意地悪な部分や俺様なところがあるので、ケンカをすることも多々あった。けれど、その時間が勿体ないという斎はすぐに「悪かった。」と謝ってくれるのだ。ケンカをしてギクシャクしてるしている時間があるなら、仲良く過ごしていた方がたのしいだろ、という考えらしい。
始めは、「ただ謝ればいいって思ってる。」なんて、子どもみたいな反抗をしていた夕映だったけれど、一緒に過ごしていくうちに、「彼の言う通りだな。」と思うようになっていた。ケンカになる前に話し合って、なるべくケンカをしないようになっているのだ。
そのため、彼といる時間は心地良いものになっていた。
そして、彼の付き合うなかで大学と同じぐらい長い時間を過ごしていたのが、彼の部屋にある本の部屋だった。
斎はよく九条家の実家に招いてくれたので、彼の両親とも仲良くなっていた。斎がいない時でも一緒に夕飯を食べる中になり、とても可愛がってくれているのを夕映自身も感じていた。
そんな幸せな日々を過ごしていた大学4年の終わりの時期に事件が起こった。
斎は大学の頃から自分の会社を持っていたので、もちろん就職もなかった。夕映も翻訳家として活動するために、学生の頃から少しずつ仕事を貰っていたので、就職活動もほとんどなく、ゆったりとした学生生活の最後を送ろうとしていた。