南の言葉に、夕映は嬉しくなってニヤついてしまう。それを南は苦笑していた。
「幸せそうだね。………私も早く恋人見つけようー。」
「南ちゃん、可愛いからすぐ恋人出来るよ!」
「………ファンクラブができそうなぐらい美人のお嬢様が言ってくれたから、望みはあるかなー。」
「え、ファンクラブ……?」
「見た目だけ王子様の斎くんと美人で優しい大学テニス界のお姫様の夕映が恋人になったってバレたらすごい事になりそうだね。」
「………そんなことないよ。」
南は自分の事をいつもべた褒めする。けれど、夕映は自分がそんなに人気があるとは思っていないのだ。
告白されたことがないわけではないけれど、斎ほどではないのだ。
そんな事を思って返事をしようとした時だった。
「夕映。」
「あ、斎……。どうしたの?」
気づくと話しをしていた本人が、夕映たちが食事をしているテーブルの横に立っていた。
「昼食終わったのか?」
「う、うん……。斎は……。」
顔が少し怒っている?と、オドオドしながら夕映が返事をした。けれど、言い終わる前に、斎は夕映の手を掴んで引き寄せてきたのだ。
「えっ………!?」
「南、こいつ借りるぞ。」
「次は空きコマだから、ごゆっくり。」
「……悪いな。」
「ちょっと、南ちゃん!?」
そういうと、斎は夕映の手を掴んだままズカズカと歩いていく。
南はにこにこしながら手をヒラヒラと振っているだけで、助けてくれようとはしなかった。
けれど、夕映は驚きながらも、彼が自分に会いに来てくれたのを喜んでしまう。
これが憧れだった人が恋人になったという事なのだろうか。そんな事を考えながら斎の背中を見つめていた。
繋いでいる手が少し強くて、それが男らしいななんて感じてしまうぐらいに、夕映は舞い上がっていた。